【SOUND】ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第6番 作品70-2
L. v. ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第6番 作品70-2
演奏:林智之(ヴァイオリン)・西山健一(チェロ)・三宅麻美(ピアノ)
三宅麻美&N響メンバーによるベートーヴェン室内楽シリーズ vol.4より
2012年4月9日 カワイ表参道コンサートサロンパウゼ
L. v. ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第6番 作品70-2
演奏:林智之(ヴァイオリン)・西山健一(チェロ)・三宅麻美(ピアノ)
三宅麻美&N響メンバーによるベートーヴェン室内楽シリーズ vol.4より
2012年4月9日 カワイ表参道コンサートサロンパウゼ
昨日、梅雨の晴れ間に、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館の「ターナー 風景の詩」展へ。
Turner and the Poetics of Landscape @Seiji Togo Memorial Sompo Japan Nipponkoa Museum of Art
ベートーヴェンと同じ時代に生き、ロマン主義、印象主義を先取りした画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー。
数年前の都美館での展示に行けなかったのがずっと心残りだったので、楽しみに出掛けた。
どの絵もまず、風通しのよい、心地良い空間が広がる。そして誰よりも光を求めているのがわかる。
空も、青よりも白を多く用い、 夕景の薄い紅色と、大地や木々の土色がグラデーションを成す。
太陽、空、海、川、山、岩、波、風 など自然に対する畏敬の念と、城や遺跡などの建築物への愛着と。
ダイナミックな風景の中に、人々の暮らしを非常に控えめに、かつ愛情を持って描き込んでいる。そのスタイルにふと、明治の日本画家、川合玉堂を思い出した。
多くの作品が、フランス、スイス、イタリア等に旅行に出かけてスケッチをし、恐るべき記憶力をもとに、アトリエに戻ってから制作されたそうだが、イングランド人だからこその南国の光への憧れと、緻密な筆使いが、ロマン的な色合いや空間を作り出しているように感じられた。
10代のころから才覚を表し、母親が精神病を患っていて、自身も情緒不安定だったそうだが、数多く展示されていた白黒のエッチング作品は、その性格からかどれも当時にしては異常なほど細かく描かれており、色彩があるものに比べて、より光が鮮烈に伝わってきた。
今回の展示は長編詩の挿絵など、比較的コンパクトなサイズの作品が多かったので、イギリスに行って、もっと大きな作品を存分に観てみたいと思った。
先週、仕事帰りに渋谷・松濤美術館の「チャペック兄弟と子供の世界」展へ。
Children’s Themes in the Works of the Capek Brothers@Shoto Museum of Art, Shibuya
カレル・チャペックとヨゼフ・チャペックの兄弟は20世紀初頭のチェコのマルチアーティスト。兄ヨゼフが主に絵を、弟カレルが文章を担当し、兄弟揃って同じ新聞社の編集部に勤め、ヒトラーやナチズムを記事や風刺画で批判しながらも、子供向けの日曜版紙面を担当して挿絵付きエッセイを掲載したり、子供のための絵本を数多く手掛けたことで知られている。
ヨゼフの絵はキュビズムやプリミティブ・アートの影響を受けて、単純な線と構図で描かれていながら、非常に温かみがあって、特に油彩画よりもドローイングでその芸術的センスが良く感じられる。鉛筆の線の太さ、濃淡、筆圧が手に取るようにわかり、見応えがある。髪の毛などは5、6本の線しか描かれていないのだが、その向きや角度によって愛くるしいキャラクターを生み出していく。
おとぎ話の挿絵も多く描き、挿絵にも芸術的な価値を与え、子供のうちから芸術に触れる必要性を示した。
「子供の世界は私たちの世界そのもの。でもそれは私たちの世界よりも充実していて美しく、驚きにあふれている」というチャペック兄弟の優しい眼差しから創られた豊かな世界を体感し、美術館を出るときには自然と笑顔になっている自分に気づいた。
昨日、都内での仕事前に、緑に囲まれたお気に入りの美術館に立ち寄りました。
アール・デコ リヴァイヴァル!
旧朝香宮邸物語&フランス絵本の世界
ART DECO REVIVAL@東京都庭園美術館 Tokyo Metropolitan Teien Art Museum
旧朝香宮邸は、フランス遊学中の朝香宮が交通事故に遭い、療養のために長く滞在した間に訪れたアール・デコ博覧会に触発されて、ルネ・ラリックやアンリ・ラパンに内装、設計を依頼して昭和6年に建てられた邸宅。のちに首相公邸や迎賓館にも使用された歴史的な建物で、1年に一度の建物公開では、一階と二階、ウインターガーデンと呼ばれる三階の温室も訪れることができる。
照明や家具、ドアの取っ手や暖炉の囲いにいたるまでアール・デコ様式をふんだんに取り入れた作りになっており、あちらこちらで立ち止まりながら、贅沢な気持ちでのんびり歩くことができる。(撮影OKの展示だったので、写真をご覧ください)
そして奥にある新館では、鹿島コレクションによるフランス絵本の展示。モノクロから彩色の印刷に変化し、アール・デコやロシア・アヴァンギャルドに通じるデザイン性に溢れた絵本まで、眺めているだけで楽しい。お決まりのジャンヌダルク、ラ・フォンテーヌの寓話に、フランス民謡や子供の作法を示すもの、ドビュッシーが曲を付けたアンドレ・エレの『おもちゃ箱』もある。中でも、ウクライナで生まれモスクワでロトチェンコらに師事したナタリー・パランの芸術的な作品に惹かれ、思わずミュージアムショップで復刻版を買ってしまいました!
ピョートル・アンデルシェフスキ
Piotr Anderszewski Piano Recital@Sumida Triphony Hall&Yamaha Hall
ブリュノ・モンサンジョンのドキュメンタリー映像を観て以来、ずっと気になっていたアンデルシェフスキの演奏をようやく生で聴いた。しかも2日連続。
初日のすみだトリフォニーホールではオールバッハ・プログラムで、平均律第2巻よりハ長調、変イ長調、嬰二短調とイギリス組曲第3番、第6番。
まず音が美しい。
脱力した上半身と確実な打鍵から生み出される音楽は即興性に富み、臨場感というのだろうか、今この瞬間の尊さを感じさせてくれる。
それぞれの声部に濃淡が付いて、弾き分けが徹底している。調性が変わる度、様々に音色が変化していき、フーガでは対旋律を際立たせた時の主旋律の儚げな響きが、そして組曲では生きた拍感が舞曲特有のリズムの愉しみを聴く側に与えてくれる。
目の前の音楽に純粋に、ひた向きに身を捧げるアンデルシェフスキ。光と陰、歓びと哀しみ、恐れと救い、叫びと嘆き、諦めと希望、迷いと悟り….バッハには全てが内在することを実感させてくれる。所々に入るトリルやヴァリアンテの品の良さといい、曲間の運び方や呼吸に表れる様式美といい、私にしてはめずらしく(笑)久しぶりにあれこれ考えず、紡ぎ出される音律に身を委ねて聴くことが出来た。
アンコールにベートーヴェン バガテルop. 126-1、ショパン マズルカop. 59-1、ヤナーチェク 草陰の小径第2集。
翌日のヤマハホールでは、当初予定していたプログラムが一部変更になり、結局モーツァルトの幻想曲ハ短調とソナタハ短調以外は前日に聴いた曲になった。
前日とは違い、強音の響きを扱うのが難しい空間で、イギリス組曲は対比よりも弱音の中での表現を試みていて、ヤナーチェク 草陰の小径第2集やアンコールのショパン マズルカハ短調の語り口は、前日の演奏よりもさらに奥深く、立体的なものになっていた。
自分と同世代なだけに、今後もますます目が離せないピアニストだ。
〔facebookパーソナルページより転載〕
ムン・ジヨン ピアノリサイタル@紀尾井ホール
Mun Jiyeong Piano Recital @ Kioi Hall Tokyo
最近の、若手韓国人の国際コンクールでの活躍はめざましく、海外に留学せずに国内の先生のみに師事して優勝してしまう人が後を絶たない。
今日聴いたムン・ジヨンもそのひとりで、18歳で高松とジュネーブ、19歳でブゾーニ国際コンクールを制したというのと、オール・シューマンという魅力的なプログラムに惹かれて足を運んだ。
かなり大柄な人で、蓋の開いたピアノと同じくらいの背丈があり、腕も付け根から肘までがしっかりと太いし、さぞかし良い音が鳴るのではと期待したが、まず初めのアラベスクから音色変化の乏しさに首をかしげる。
フレーズが非常に長く、レガートが持続して静寂を大事にする演奏は好感が持てる。だが、静かな部分は拍感がなくなってのっぺりしてしまうので、どうしても単調に聞こえてしまう。
次の幻想曲の出だしは身体の動きと音が見合わないのがもどかしく、この情熱的な第1楽章がそうは伝わって来ないのが歯がゆい。第2楽章になると、その律動は安定した技術に支えられてようやく息をし始めた感があり、難所もノーミスで楽々と弾き切るし、シフトペダルを使用した部分はハッとする音色でリズミックな音律がとても生き生きと聞こえてきた。
後半、花の曲に続いて演奏されたソナタ第1番 嬰へ短調がさまざまなコンクールで弾いてきただけあって、自在な表現力を伴っており、一番集中して聴いた。
特に感心したのが第3楽章の最初のトリオで、しなやかな歌い方と即興的なフレーズ感がシューマンらしい楽想を見事に作っていた。
コンクールで勝ち抜くには選曲もとても大切で、スタッカートや連打の機敏さとモノトーンな音色、そして徹底的に教え込まれたのであろうポリフォニーを弾き分ける技術を持つ彼女に、このソナタは非常に合っている、と納得させられた。
まだ22歳と若いので、是非海外に出て様々な景色や空気、そして言語に触れて、沢山の経験をして欲しいと願うばかりだ。
アンコールはシューマン=リストの献呈とトロイメライ。
〔facebookパーソナルページより転載〕
ルードヴィヒ・ファン・ベートーヴェン:ソナチネ ヘ長調 Anh. 5 より 第1楽章
Ludwig van BEETHOVEN: 1st mov. from Sonatine F-Dur Anh. 5
フランツ・シューベルト:メヌエット D 41
Franz SCHUBERT: Menuetto, D 41
フリードリヒ・クーラウ:ソナチネ ト長調 Op. 55-2
Friedrich KUHLAU: Sonatine G-major, Op. 55-2
ヨゼフ・ハイドン:ピアノ・ソナタ Hob. XVI/4 より 第1楽章
Josef HAYDN: 1st movement from Piano Sonata, Hob. XVI/4