Mami Miyake - Pianist

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【コンサート覚書き】アレクセイ・リュビモフ・ラスト・リサイタル

2025年4月14日 by admin

ALEXEY LUBIMOV
Last Solo Recital @ Misono Church Kamata

Mozart Klaviersonate c-moll K457
Schubert Impromptu Op.142-1,4
Chopin Barcallore
Debussy 6 Préludes
      Feuilles mortes
      Les Fées sont d’exquises danseuses
      Bruyères
      Général Lavine – excentrique
      La terrasse des audiences du clair de lune
      Feux d’artifice
     L’ Isle joyeuse

御歳80歳にしてなんとエネルギッシュな演奏!
緑内障が進んでいるとのことで、歩く時は以前のように颯爽とはしていないが、最後とは全く思えないほど強靭な打鍵、リズムの切れ、香り立つ和声、何層にも織り成す響き、想像を掻き立てる音描、100年前のベヒシュタインをハンマーフリューゲルのような音からアンコールで弾いたアルヴォ・ペルトの凍てつくような弱音まで自在に操る表現力に、衰えは感じさせない。それでももう弾かないと断言せざるを得ないということなのか… もう2度と聴けないなんて残念でならない。

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【アート覚書き】川村記念美術館再訪

2024年12月24日 by admin

千葉県佐倉市にあり、これまでに3回ほど訪れているお気に入りの川村美術館。立地は良くないけれど広々とした庭園が気持ちよく、建物も天井が高く開放感があって贅沢な造りになっている。
それがなんと経営難から今年で閉館するというショッキングなニュースが数ヶ月前に流れ(皮肉なことにその後来場者が急に増えて閉館は3月末に延長されたのだが)、もう一度じっくりと常設展示を観なければと先週再訪した。

入ってすぐのラトゥール『花瓶の花』は、
漆黒の背景に薔薇やカーネーションの花弁が立体的に浮かび上がる。影は影のまま描くことで、照らされた本体の臨場感がより伝わってくる。

シダネルの『薔薇と藤のある家』は、
よく見ると細かい筆遣いからなる点描画だが、絵から少し離れただけでそれらの色の混ざり合いが起きて、暖かみのある緑色とピンク色のグラデーションが目に優しく心和む。彼の作品は必ずどこかに明かりが灯っていて、団欒の温かさを感じる。

おなじみのモネ『睡蓮』。
先日倉敷・大原美術館で観た睡蓮は赤よりも黄色の花弁が印象的だったが、ここは右手に青い睡蓮、左手前に濃い紅の睡蓮が描かれており、水面に映る空の色が黄色味がかった水色。奥の方は薄ら赤く、夕暮れ時だというのがわかる。柳の紫色も柔らかく池に映り込んでいる。このモネのその場にいざなうような空気感は誰も真似できないものだと思う。

ルノワールの『水浴する女』では、肌の艶と透明感が際立っているが、近くに展示されているボナール『化粧室の裸婦』では、女性の肌や曲線よりも、壁面の柄模様や左下の大理石の色味に目がいく。

ブランクーシのブロンズ彫刻『眠れるミューズⅡ』は、金色に塗られた面長な女性の頭部が、絶妙な角度で木の台座に横たえてある。台座にも彫りが施されていて髪の毛の彫りとの関連性があり、全体としての調和がある。

ピカソの、同じ題材による、同じグレーを色調にした2作品が並べて展示されている。
1927年に描かれた左側の『肘掛け椅子に座る女』はいわゆるキュビズムの絵。1954年に描かれた右側の『シルヴェット』は手や腕こそ直線的だが、彫りの深い顔立ちと多量な髪をポニーテールで束ねている様子を野太い線で描き、まだあどけないが女性らしさのある上半身の膨らみを丁寧に表している。ピカソはこのモデルをたいそう可愛がっていたそう。

藤田嗣治の『アンナ・ド・ノアイユの肖像』は以前観た時もとても印象的な作品だった。
藤田らしい白色の背景に、金色で透け感のあるワンピースを着た細身の女性が繊細な筆遣いで描かれている。
比較的大きなサイズの絵なのでその背景の占める割合が多く、彼がこだわった白色がより一層この絵を際立たせている。

シャガールの『ダヴィデ王の夢』。
横幅は2メートル以上あるだろうか、赤青黄紫の色味が画面一杯に表され、作品にこちらが包み込まれるような温かみを感じる。右横に描かれたダヴィデ王の夢に加え、シャガールお馴染みのモチーフが勢揃い。太陽や魚、らば、抱き合う男女、ヴァイオリンやチェロなどの楽器、エッフェル塔、ピエロ、踊る人々、働く人々、語らう人々… シャガールは沢山観てきたけれど、彼の色彩や魅力をこれ一枚で存分に味わうことのできる作品だと思う。

ユトリロの『メクス村』。
村の工場や建物と人々が通りがかるさまが描かれたこの作品は、背景のどんよりとした冬の空とは裏腹に、何かユトリロらしからぬ活気が感じられる。クリスマス前の楽しげな様子なのかと思いきやマーケットは描かれてなく、雪化粧をした建物の様子を厚みを持たせた白で鮮やかに描いている。そしてよく見るとvive la france の文字が壁にあり、1914.12.24. の日付入りのポスターが貼ってある。なるほど第一次大戦が始まったばかりで、建物の上にフランス国旗が掲げられている。その国旗の赤色や人々の服装の赤い差し色、人々の赤ら顔が画面に活気を与え、街の人の士気の高まりのみならず、ユトリロ本人の興奮と狙いが感じられる。

マックス・エルンスト『石化せる森』は、
全体が暗い黒緑色で覆われている。上に浮かぶ赤い丸は太陽だろう。だけれど中心は穴が空いている。何かの警告なのか?環境汚染で息のできなくなった森の木々が、絵の具を固めた塊を用いて白骨化しているような、地球が終末を迎えたかのような、考えさせられる作品。

そして何といっても

『ロスコ・ルーム』。

この部屋だけでも残して欲しい。
この部屋が日本にあることが誇らしい。
初めてロスコに出会ったのもここ川村美術館。
企画展だったので、大きな空間全てにロスコの作品が掛けられていて、その圧倒的なエネルギーに衝撃を受けた。

この部屋には同系統の色味7枚の作品『シーグラム壁画』が展示してあり、作品保護のために明かりがとても暗く、しかも湿度がある。それが余計に厳かな雰囲気を作り上げている。
絵の中に大きな四角い枠があり、それが良く見えるものもあれば、背景と同化しているものもある。枠の大きさや太さもそれぞれ違っていて、それは自分の中の観念のような、周りとの境界線のような、自分の中の限界線のような。心を封じ込めようとする、社会で生きる上で必要な体裁のような。その時その瞬間の自分の心理状態を表しているのだろうか、ある時は枠の方が大きかったり、枠が歪んでいたり、またある時は枠の中の自分が前面に膨張してくるように見えたり、またある時は枠の向こうが透けて見えるような感覚になったり。
何しろこの枠の中を埋め尽くす塗りにパワーを感じ、それは人として生きていくための声・叫びであり、血であり肉であり、そこから溢れた情熱に思えてならない。だからこそ観るたびに毎回心打たれるのだと思う。

ほかフランク・ステラやジョゼフ・コーネル、サイ・トゥオンブリー、エルズワース・ケリーなど現代美術も多くある。

何とかこの場所を維持していただきたいと心から願っています🙏🙏🙏

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【コンサート覚書き】ブロンズ/コブリン/ピレシュ&ゲルネ

2024年11月29日 by admin

もうだいぶ経ってしまったけれど、10月末から11月にかけて3夜連続(3日とも違うピアノ)で演奏会に出かけたので、備忘録として思い出しながら書いてみます🗒

Willem Brons Piano Recital 

ヴィレム・ブロンズ ピアノリサイタル@すみだトリフォニーホール小ホール

ピアノはスタインウェイ。

私が芸大に通う頃から良く公開レッスンをしにいらしていたオランダの名伯楽。87歳とは思えない足取りとお顔の血色も良く元気なお姿で舞台に登場。

古楽器を聴いているかのような打鍵、リズムやトリルの扱い、ペダリングなど、サウンドは決して豊かではないけれど、モチーフやフレーズを一つ一つ大事に語りかけるように、慈しむように扱う。

曲の展開部分で多声になればなるほど熱が増してのめり込んでいくので、とにかく音楽への熱意が伝わってくる。バスや内声のラインに導かれて聴いて行った先でまるで贈り物が届けられるかのように、フレーズ全体が立体的に見えてくることに凄みを感じる。

アンコール最後のシューベルト『楽に寄す』のしみじみとした味わいといい、この演奏の価値が現役学生にどれだけ理解できて、共感することができるのだろうと、次の世代に伝えていかなくてはならないものの甚大さを思う。

Alexander Kobrin Piano Recital 

アレクサンダー・コブリン ピアノリサイタル@浜離宮朝日ホール

ピアノはSHIGERU KAWAI。

チャイコフスキー『四季』全曲とラフマニノフ音の絵op.39全曲というロシアンプログラムを楽しみに出かけた。本人の意向で前半を音の絵に変更。柔らかい腕遣いとともに、ただ呼吸をするのと同じようにエチュードを弾き始める。終始大きな波に身を委ねていて、全9曲を脈々と一つの絵巻物のように聴かせていく。ポリフォニックなアプローチ等、桁外れの頭脳は健在。ただあまりにも流れ重視のため、心が入っていないかのようにも聞こえる。スケルツォの要素が強いh moll やa mollは躍動するリズムや色彩感を楽しめたが、時折りリズムが必要以上に端折って詰まってしまい、音も不明瞭のままそれでも突き進んでいくのに疑問を抱く。

後半に持ってきたチャイコフスキーも、出だしこそ弱音の響きへのこだわりが聴こえたのだが、プレトニョフのそれとは違い、まだ開拓途中のような感じ。終始懐かしんでいるかのような、何か彼自身もがいているような。

2015年にはアメリカ国籍を取得してもう長く向こうに住んでいるとは言っても、今後もこうしてロシアンプログラムを求められ続けるだろうし、現在の国際的なロシアの状況が少なからず影響を及ぼしているのではと思えてならなかった。

Maria Joao Pires&Matthias Goerne

Schubert “Winterreise“

マリア・ジョアオ・ピレシュ&マティアス・ゲルネ@サントリーホール

今年度の高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したピリスがゲルネを指名しての冬の旅。

ピアノはヤマハCFX。

歳の差も親子のようだけれど背格好の差もものすごく、ゲルネのような大男と並ぶとピレシュは余計に小さく見える。

ゲルネを十数年前に聴いた時は、響き重視の歌唱法のあまりドイツ語がよく聞き取れずにがっかりした記憶があるが、いまや50代後半となり余分なものを削ぎ落として、円熟味が増している。

ピレシュのピアノは暗さはないが凛とした空気感があり、巧みなコントロールで主張と寄り添いを自在に操っている。何よりピレシュ自身が心からこの舞台を楽しんでいるので、聴いているこちらも集中して彼女の創造する世界感を楽しめた。

ただ、舞台に近い2階右側の席に座ったので、ゲルネが終始、真反対の左側2階へ向かって歌うのだけが残念だった。

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【コンサート覚書き】ミシェル・プラッソン ラスト・コンサート

2024年8月16日 by admin

Michel Plasson Japan Last Concert “Au Revoir!”
Tokyo Opera City Concert Hall Takemitsu memorial

Tokyo philharmonic orchestra / Nikikai Chorus Group

お盆真っ只中の昨日、ミシェル・プラッソンのラスト・コンサートを聴きにオペラシティへ。
ラヴェル/マ・メール・ロワ、ダフニスとクロエ第2組曲とフォーレ/レクイエムというフレンチプログラム。(オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団、合唱は二期会合唱団)

御歳90のプラッソンは歩くのにも時間をかけての登場だが、いざ指揮を始めると拍取りも潔く、ラヴェル独自の沸き立つようなパッションの表現や、響きの燻りから調和への見事な移行、場面転換のタイミングの妙など、これまで培われたものやご自身の情熱・拘りの全てが注ぎ込まれた演奏に思わず聴き入った。
かつて大学の授業で歌ったことのある懐かしいレクイエムは、ソリストの歌唱がオペラ的過ぎて少々気にはなったけれど、背面のパイプオルガンも含めハコ全体が鳴り響く様は圧巻。考えてみたらこのホールでオルガンを聴くのは初めてかもしれない。
アンコールのラシーヌ雅歌を振り終えた直後に、思わずプラッソンが祈るように手を組んだその姿は胸を打ち、今後忘れることは無いと思う。

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【アート覚書き】近代の日本画展@五島美術館

2024年6月9日 by MiyakeMami

大学の仕事が早く済んだ昼下がり、前から訪れたいと思っていた五島美術館へ出掛けた。

展示室は右と左にひとつずつ。
外には、武蔵野台地から多摩川への丘陵地を活かした広大な庭園もあるようだ。
展示室1の手前にいきなり、運慶作と伝わる愛染明王坐像(重要文化財)がわりと無造作に置かれてあり、思わず立ち止まる。冠の獅子の表情から土台の蓮作りまで、観入ってしまう。

入ってすぐの『遊鶴図』を描いた橋本雅邦は、横山大観や川合玉堂の師匠で、二羽の鶴が精緻な筆遣いで描かれている。首を伸ばした鶴と折り曲げた鶴どちらも、緻密で写実的な脚の筆遣いに目が行く。
それに比べて羽や体のラインは一筆で描く大胆さ、首に描いた黒と白の塩梅も目を引く。

跡見花蹊(のちに跡見学園を創立した女流画家)の墨絵『茄子に雀』では、薄墨で描かれた茄子の葉先の鋭角さ、筆先のかすれ具合も生々しく、新鮮に感じられる。茄子の実それぞれの角度に遊びがあり、墨の濃淡で艶やそのサイズ感を巧みに描いている。
雀は淡い墨色で描くことで主たる茄子との距離をあらわし、羽と背景を同色にすることで空気との一体感、浮遊感を見事に表現している。

渡辺省寧の『牡丹』は、雪の覆いかぶさる藁の下に鮮やかなピンク色の牡丹が大胆に描かれ、その花弁の濃淡に目が行く。
その下にうずくまるように、前方からの角度で小さく描かれた雀の姿に、季節外れの大雪に凍える様子と、それでも咲き誇る牡丹の生命力を感じる。
洋画を学んだ色彩感覚と、対象への焦点の当て方に技が光る作品。

大橋翠石『猛獅虎の図』では、虎と獅子の対峙するさまを描いているが、虎は前脚を踏ん張って精一杯挑むのに対して、獅子は左前脚が折れていて、ふと虎の存在に気がついた様子。それでも眼孔を光らせて威勢を放っている。
虎の皮膚の茶色に何とも言えないビロードのような質感を与え、獅子に立ち向かう緊張の瞬間を表しており、肌が小刻みに震えている様にも見えてくる。

川合玉堂の『松鷹図』では、まるで印象派のような松の朧げな筆遣いに対して、鷹の存在感たるや、眼と口もと、頭の横ラインに緊張が迸っていて、緊張と弛緩が見事に描かれる。

小杉放庵の『啄木』も面白い。
柏の木が幹の途中で切られて朽ちていて、そこに停まる啄木鳥は、さもがっかりと肩を落としているように見える。洋画を学んだのちに日本画を描くようになっただけあって、油絵のタッチを活かした啄木鳥の塗りに思わず目が行く。
虫食いだらけの葉は枯れていながら色のグラデーションが美しく、幹には大小幾つかのキノコが生えており、大きなものは5色の色を使ってカラフルに、そしてデザイン的に描かれる。

デザインといえば、小林古径の『茄子』はデザイン性に非常に優れていて、葉も花も実も様々な角度から見た姿をポップに描く。
それに対して横山大観の『茄子』は墨絵とはいえ、何もこちらに訴えてこないのが不思議だ。

そのほか、前田青邨の幻想的な『紅葉』や、村上華岳の味わいのある『野鳥』、奥村土牛の『栗鼠』の愛らしい横顔と柘榴の紅も印象的だった。

展示室2では特別展示として古文書が展示されており、後醍醐天皇、藤原為定、足利義満の詠んだ和歌もあって興味深かった。

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【コンサート覚書き】ボリス・ペトルシャンスキー ピアノ・リサイタル

2024年6月3日 by MiyakeMami

Boris Petrushansky Piano Recital
Yamaha hall Ginza
Schumann & Mussorgsky

始まった瞬間からホール全体を揺るがすような隅々まで飽和する響きに圧倒される。それでいて決して破綻することのない豊かな響き。

6月で75歳になられるとは思えない、全く衰えない恩師の強靭な生命力を全身で浴びて、いま生きていることを実感する。

楽曲への様々な角度からのアプローチ、分析力、打鍵やペダリング、フレージング等に驚かされ、常に進化し続けるその探究心にあらためて感服。

先生が生きていてくれて、こうして全てを我々に届けてくれることに只々感謝🙏

Grazie maestro per la sua vitalita travolgente!

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【コンサート覚書き】アリス・アデール ピアノ・リサイタル

2024年2月23日 by admin

@武蔵野市民文化会館
アリス・アデール
〈ピアノ〉
バッハ 《フーガの技法》
『フレンチ・プログラム』セヴラック、ドビュッシー、ラヴェル、フィリップ・エルサン

春の陽気が続いた先週、2日に渡って78歳にして初来日のフランス女流ピアニスト アリス・アデールを聴いた。

初日は《フーガの技法》。

譜面台を立てて楽譜を置き、1曲ずつ大きな譜面をめくっていく。まず背筋がピンと伸びて姿勢が非常に良い。約100分間休憩なしだが、ピアノの横に台を置き、途中3、4回口に水を含ませながら演奏していた。

厳かな面持ちで静かにそれぞれの主題を始めていく姿はまるで神にその身を捧げる修道女のようで、舞台の背後に大きなパイプオルガンがあるせいか、教会でオルガンを聴いているような錯覚に陥る。頂点に向かってポリフォニーが入り組んでくると各々の声部の絡む様がはっきり聴き取れず彫りが浅くなってしまい、バッハならではの大伽藍が現れてこないのが残念。アンコールの小品になった途端に音色に色彩と潤いが倍増したので、5日後のフレンチ・プログラムに期待する。

そしてフレンチ・プログラム当日。

冒頭のセヴラックの小品では、先日のフーガの技法とは異なり、思い切りの良い骨太な音楽を聴かせてくれる。次はドビュッシーの練習曲集から3曲。’対比音のための’のように音楽が多層構造になってくると、その弾き分けや打鍵の繊細さは今ひとつだが、’アルペジオのための’では即興的で軽妙なリズム取りに長年培ってきた感覚的な巧さを発揮し、ラヴェルの”鏡”からの3曲ではそれぞれの場面に合わせた音色造りや響きの豊潤さが見事だった。

後半は彼女に捧げられたというフィリップ・エルサンの《エフェメール》を楽譜とともに演奏。儚さというタイトルの如く24の小曲からなる曲集で、日本の俳句(主に松尾芭蕉)から得たインスピレーションがメシアンに似た和声を用いて書かれているのだが、アデールはまるでスケッチをするかのように、色合いを大胆に音で描いていく。フレージングなどの構築性があまり必要ないからだろうか、演奏は一層溌溂としていて、確信に満ちた、生きた音を紡いでいた。

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【コンサート覚書き】ミハイル・プレトニョフ指揮 東京フィルハーモニー管弦楽団

2024年1月26日 by admin

@東京オペラシティ
ミハイル・プレトニョフ指揮 東京フィルハーモニー管弦楽団

シベリウス 組曲《カレリア》、グリーグ ピアノ協奏曲、シベリウス 交響曲第2番

プレトニョフ&東フィルの北欧プログラムを聴きにオペラシティへ。

ベルリン留学時代は良くフィルハーモニー舞台後方の席で指揮者の表情や動きを観察したが、オペラシティではおそらく初めての後方席。思ったより音響は悪くなく、一列しかない席のため、オーケストラの一員になったような気になれる。団員の方々の熱の入りようも非常に良く伝わってくる。数ヶ月前にサントリーホールで聴いたマケラ&オスロフィルのシベリウスと比べて、明るさと暗さの移行、共存がより自然に感じられ、オーケストラの一体感というよりそれぞれのパートを巧みに活かした立体感のある音楽を楽しんだ。

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【コンサート覚書き】クラウス・マケラ指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

2023年10月25日 by admin

@サントリーホール
クラウス・マケラ指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

シベリウス 交響曲第2番、第5番

昨夜は初マケラでサントリーホールへ。
話題の20代指揮者を良く良く観察する。

細身で長身のしなやかな体で前に迫り出しながら非常に良く動く。腕のリーチが長く、指先までどの関節もとてもしなやかなので、早い動きもオーケストラの隅々まで届くような、柔らかい動きもオケ全体を包みこむような印象。終始楽しそうに生き生きとした表情を湛えながら、オーケストラから驚くほど豊かなサウンドを引き出し、ともすると難解なシベリウスの交響曲を飽きさせずに聴かせていく。タイミングと動きが非常に明確なアインザッツを大きな流れの中で与えて、ここぞという時には体幹がブレずに全身で音楽へ奉仕する姿勢。オスロ・フィルから絶大な信頼を得ているのが良く伝わった。

温暖化のシベリウスだなんて声もチラホラ聞こえてきたけれど、見ていて楽しかったし、是非他の曲を振るのも聴いてみたい。

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【コンサート覚書き】新国立劇場《修道女アンジェリカ》《子供と魔法》

2023年10月10日 by admin

@新国立劇場
《修道女アンジェリカ》《子供と魔法》

久しぶりのオペラ鑑賞で新国立劇場へ。

どちらの演目もそれぞれの演出の良さがあり、素晴らしい音楽然り、まさに総合芸術を身体で堪能した。

練習の合間を縫って出掛けて良かったと心から思えた舞台でした。

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