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【アート覚書き】ルート・ブリュック 蝶の軌跡展
Rut Bryk Touch of a Butterfly@Tokyo Station Gallery
東京駅丸の内北口にあるステーションギャラリーは、オリジナリティー溢れる企画でアートマニアを楽しませてくれるが、フィンランドの女性セラミック・アーティストだったルート・ブリュックの展示もその例に漏れず、チラシを見た時から妙に惹かれていた。
国内では初めての本格的な展示となったブリュックは、洗練された北欧デザインが売りの食器メーカー、アラビア製陶所でアーティストとして働きながら、個性的な陶板アートを作成する。
最初の展示室は今回写真撮影が許されており、深い青や緑、落ち着きのあるピンクやターコイズブルーなどその色合いに惹かれ、またその素朴で歪みのある形に惹かれ、スマートフォンで撮影をしながら何周まわっても飽きずに観続けた。ベネツィアの宮殿やシチリアの教会、カレリアの住居など、釉薬のかかった部分の艶が美しく、枠の風合いとともにステンドグラスを思わせる。ライオンのお腹の部分にさりげなくロバがいたり、3羽の鳥が向き合っていたり、時にユーモラスでメルヘンな題材を独創的なアートに仕上げている。父親が蝶の研究者だったので、様々な色の蝶の作品も目を惹く。
これだけでも十分満足できるものなのだが、その後モザイクのように小さなタイルを組み合わせて創るタイルアートへと変貌する。ブリュッセルの万博やミラノトリエンナーレ芸術祭のために、白、アースカラー、オレンジ、肌色のタイルと立方体の組み合わせでそれぞれの都市を表現したり、インドなどを旅した印象を形にしたイコンがあったり。
そしてさらにタイルが粒子のごとく小さくなり、簡素化していく。当然のごとく抽象画となり、幾何学的な模様が多くなる。
北欧の純粋な美しさと力強い自然を描いたという晩年の作品、《春の雲》《木》《流氷》のタイルアートは、平面上に光と影を織り交ぜながら、ちいさなタイル一つ一つに意味を持たせ、生まれては朽ち果て、現れては消えて行く、万物のはかなさをも感じさせてくれた。
〔facebookパーソナルページより転載〕
【コンサート覚書き】地中海のポリフォニー コルシカの男声声楽アンサンブル「タヴァーニャ」
地中海のポリフォニー コルシカの男声声楽アンサンブル「タヴァーニャ」
La folle journée Tokyo 2019
Cor di memoria Tavagna Corsian chant
一昨日のこどもの日、今年のラ・フォル・ジュルネ音楽祭に一公演だけ聴きに出掛けた。
会場は以前にも何度か足を運んだことのある250席ほどの、響きのデッドなホールB5。
今回の「タヴァーニャ」は9人のアカペラアンサンブルで、時間になって舞台上にゾロゾロと出てきたのが、イタリアの街角に居そうな普通のおじさん(失礼な言い方だが、9人中2人は40代で、あとは60才以上と思われる初老の方々ばかり)なので、え? この人達が? と驚いたのだが、始まった途端にその疑いは打ち消された。
最初の2曲は3人のみで歌い、自分の声をコントロールするためか、片手を耳にあて、もう片方の手は隣のメンバーの肩に掛けたりと、身体や顔を寄せ合って歌う。声は地声に近く、ソロパート1人にあとの2人が合いの手を入れ、和声付けをする。
特に冒頭の“タリウ村のパディエッラ”という曲は、世界文化遺産に登録されたコルシカ島の歌謡だそうで、即興的なこぶしを使った張りのある地声がホールに響き渡り、その哀愁に満ちた歌詞の内容もあって、非常に胸に迫るものだった。
3曲目からは全員で円く弧を描いて立ち、お互いの顔を見合いながら、音を聴き合いながら、時に眼くばせをしたり微笑み合ったりしながら歌う。大まかにはバス担当、テノール担当など分かれているが、高い声で歌うメンバーの中には、かなり低い音域まで出せる人もいるようだった。
これだけ近くで歌い合うのだから、メンバー同士のその日の体調なども手に取るように分かるだろう、などと思いを巡らせる。
伝統的な教会歌と世俗歌に加え、現代の作曲家に依頼したものや、自分たちで創作したものもあり、教会歌以外はすべてコルシカ語(イタリア語の方言のように聞こえた)で歌われる。日常生活における喜怒哀楽のみならず、社会に対する意見や主張も歌にしていく、土着の図太さ、たくましさを感じた。
曲間でメンバーの1人が曲の説明をし(通訳付き)、「我々は先祖、祖父の代から受け継ぎ、それを息子や孫の世代に伝えていくので、そこに新しい風を入れることが重要だ」「こうして皆さんの前で披露して、皆さんのその表情から、我々の音楽が皆さんに浸透し、またそこから我々も再びこの音楽に取り組む活力を頂いている」と話すのを聞いて、まさにそれこそが芸術文化の普遍的な価値だろうと、惜しみない拍手を送った。
〔facebookパーソナルページより転載〕
【演奏会】9月8日 千葉・M&Nホール 三宅麻美・キムドヨン デュオリサイタル
2019年9月8日(日) 16時開演
千葉・M&Nホール
三宅麻美・キムドヨン デュオリサイタル
ベートーヴェン ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番
バッハ 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ より「シャコンヌ」
フランク ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
ほか