『音楽の友』2020年2月号「音楽評論家・記者が選ぶコンサート ベストテン2020」選出
2017年の「ベートーヴェンピアノソナタ全曲演奏会最終回」に引き続き、2019年12月の「ベートーヴェン・リサイタル」(初期、中期の変奏曲とディアベリ変奏曲)を、『音楽の友』2020年2月号のコンサートベストテン2020に選んでいただきました!
2017年の「ベートーヴェンピアノソナタ全曲演奏会最終回」に引き続き、2019年12月の「ベートーヴェン・リサイタル」(初期、中期の変奏曲とディアベリ変奏曲)を、『音楽の友』2020年2月号のコンサートベストテン2020に選んでいただきました!
コロナ禍のせいもあってずっと叶わなかった美術観賞。本番からも解放されてようやく足を運ぶことができました(といってももう2週間前のことです)。
記念展示を開催していた永青文庫に初めて訪れたので、備忘録として…
副都心線雑司ヶ谷駅から都バスに乗り、3つ先の停留所、目白台三丁目で降りる。閑静な住宅街、木々に囲まれひっそりと佇む永青文庫は、肥後熊本五十四万石の細川家に代々伝わる文化財を保存し、研究・一般公開のために、16代細川護立が立ち上げたもの。神田川沿いまで斜面を利用して広大な庭園も隣接している。
今回の展示のお目当ては菱田春草(1874〜1911)の2枚の日本画。
まず、1909年に描かれた『落葉』は全部で12枚の屏風絵。日本画において、それまでのように線を使わずに描く「無線描法」ながら、いやそれゆえに木肌の立体感をここまで表現できることに驚かされる。葉元から葉先へ薄緑から色あせた黄土色、そして焦げ茶へと変化していく、枯れゆく落葉の時の移ろいと生の名残。枯れる様すら美しく、愛おしく描く。腎臓から来る目の病に侵されながら、虫食いの形や葉の反りなど、落ち葉一枚一枚に愛情を注ぐ。地面に描かれた四十雀のつがいはどんな状況でも命はたゆまず続いて行くたくましさをあらわし、細枝に留まり、さりげなく佇む色鮮やかなジョウビタキを描くことで、朽ちてゆく落葉の侘しさがより伝わってくる。常緑樹の松の緑の濃さは、色というより塗りの濃さとも言え、筆使いに生への執着が感じられる。画面の奥には、幻想的でありながら凛とした存在感を感じさせる木々等、いくら見ていても飽きない。
そして、何年前だろうか、近代美術館での菱田春草展以来の再会となる『黒き猫』。『落葉』を描いた翌年、死の前年に書かれた猫の絵。視線はまず黒猫に注がれ、その歌舞伎役者のような鋭い眼差しや、左右に開いた両耳から、猫自身の緊張感を感じとることができる。そして背景や木肌との輪郭のぼかしで巧みに表現したフォルムや、指先の丸みのやわらかな質感に触れる。猫の上に目を向けると、描かれた柏の葉の形の良さに魅了される。どの葉も表を向いているのに、その照らし方や微妙な大きさの差異、虫食いの形などの変化に趣を感じる。そして全体を観ると、深い茶緑と金色、猫の黒のコントラストが見事に一枚に収まっている。
横山大観の作品も多かったが、なぜかいつもあまり惹かれない。竹内栖鳳の描いた猿の掛け軸は、開いた両腕とその表情がなんとも言えない脱力感を与えてくれて微笑ましく、彼の生き物に対する審美眼をあらためて感じさせてくれた。他に国宝の日本刀や重要文化財の仏像、陶器など所狭しと展示されていた。
観賞後は、秋晴れの庭園をのんびり散策して、神田川沿いを江戸川橋まで歩いて帰路につきました。
11月2日銀座・王子ホールでのリサイタルシリーズ《浪漫の花束》についてのインタビュー記事が、『音楽の友』10月号 118ページに掲載されました。
11月2日銀座・王子ホールでのリサイタルシリーズ《浪漫の花束》についてのインタビュー記事が、『音楽現代』10月号 113ページに掲載されました。
『浪漫の花束シリーズ第1回』が、日本演奏連盟の山田康子奨励・助成コンサートに選出されました。
月刊『ショパン』8月号の特集「ピアニストたちはいま……」に掲載されました。
『音楽の友』4月号の特集「ベートーヴェン演奏の最前線」で、今年の注目&お薦めコンサートとして11月の新シリーズ『浪漫の花束』を紹介していただきました。
昨年末の「ベートーヴェン生誕250年プレイヴェント 三宅麻美ベートーヴェン・リサイタル」のレビューが『音楽の友』3月号に掲載されました。
12月27日・ヤマハ銀座コンサートサロン●ベートーヴェン「ドレスラーの行進曲の主題による9つの変奏曲」「創作主題による6つの変奏曲」「ディアベッリのワルツの主題による33の変奏曲」
『音楽の友』2020年3月号より
東京藝大、ベルリン芸大、イモラ音楽院で研鑽を積みながら国内外で活躍の三宅が、拠点を日本に移してからも企画力に富んだ活躍を展開している。2010~17年にベートーヴェンのピアノ・ソナタ、室内楽(ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ、トリオ)の全曲演奏会。そして当夜、長年温めていたという「ディアベッリ変奏曲」をメインに、ベートーヴェン生誕250周年前年(2019年)にプレイヴェントを開催。
言うまでもなくベートーヴェンはソナタ形式に金字塔を建てたが、変奏形式においても然り。ベートーヴェン最初の変奏曲である「ドレスラー変奏曲」(1782年作)から開始の三宅。後の楽聖の幼少期の作品とはいえ、その後を啓示しているかのようなエネルギーで、それを三宅は優しい眼差しのように主題から紡いでいく。変奏を重ねながら、その先の「ディアベッリ変奏曲」の予告すら感じさせる表現に甚だ感心。「創作主題による変奏曲」(1802年作)ではベートーヴェンの筆致も濃く、ロマン派の曙の趣。そして後半の「ディアベッリ変奏曲」(1823年作)。明るい主題のあと、いきなり重厚に(Ⅰ)。かと思うと軽快になり(Ⅱ)、しばらく楽しいお喋り。シリアスな話題に変わり(Ⅳ)、以降めくるめく豊富な知識が愉しく語られる。1時間ほどの大曲なのだが、三宅がこれまで培ってきた“ベート—ヴェン”学が見事に咀嚼されているため、高く険しい山道も心地良く歩けた感覚。33の変奏の中にはベートーヴェンのすべてがあり、三宅という名道案内のお陰で素晴らしい風景の、また新しい魅力も味わえた。これは世界のどこに出しても誇れる「三宅のディアベッリ変奏曲」と言える。
●上田弘子