韓国にて デュオコンサート

2010年7月 韓国にて デュオコンサート

2日 クアンジュ   Kumho Art Hall にて

3日 ナジュ  Sim Hyang Sa Temple Hall にて

バイオリン:KIM Do-Yun ピアノ:三宅麻美

J.S.Bach ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第4番

Beethoven ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第8番

Shostakovich (ツィガーノフ編) 24のプレリュードより

サン・サーンス ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番

『音楽の友』2010年7月号

三宅麻美
芸大卒業後ベルリンとイモラに学んだ三宅麻美は近年進境の著しいピアニスト。06年に開始したショスタコーヴィチ・シリーズも第5回を迎え、ソロとアンサンブルに成長ぶりを示した。前半のソロは「3つの幻想的舞曲」と「24の前奏曲」。前者では間の取り方と、各曲の性格の対比的奏出が秀逸。後者も24曲の多彩な表情をゆとりで弾き分け、全曲飽かさず聴かせ通した。メロディスト、情熱家、皮肉屋、哲学者、さまざまなショスタコーヴィチが鍵盤から踊りだす様は愉快爽快。後半は荒井英治を招いての「ヴァイオリン・ソナタ」。なんと適任のゲストだろう。楽譜の情報を漏らさず読み取り、命を吹き込むという行為の神髄を荒井は目のあたりに見せてくれ、彼の発信を受け止めた三宅も同じ高みに昇った。スケルツオの求心力、フィナーレの両カデンツア、弓の多彩な技巧、白熱のアッチェレランド。ショスタコーヴィチ・ファンを増やしたこと間違いなし。
(5月23日・王子ホール) 〈萩谷由喜子〉

ショスタコーヴィチ・シリーズ vol.5

 

 

 

 

 

 

 

5月23日(日) 三宅麻美 ショスタコーヴィチ・シリーズ vol.5

東京銀座・王子ホール

Vn:東京フィルハーモニー交響楽団ソロコンサートマスター 荒井英治

Shostakovich:24のプレリュード、ヴァイオリンとピアノのためのソナタ

三宅麻美  ショスタコーヴィチ・シリーズ Vol. 5

三宅麻美  ショスタコーヴィチ・シリーズ Vol. 5

相貌の違いを堪能

ピアニスト三宅麻美が2006年からショスタコーヴィチ・シリーズを行い、ピアノ曲「24の前奏曲とフーガ」をはじめ、室内楽曲や歌曲のジャンルにまで踏み込んだ意欲的な演奏を聴かせてきた。シリーズ最終回で組んだプログラムは、10代、20代に作曲されたピアノ独奏曲と晩年の「ヴァイオリン・ソナタ」。出発・終盤両地点で見せる(聴かせる)作曲家の相貌の違いを目の当たりで堪能する刺激的なコンサートとなった。
まるでしゃれた前菜を供するように小気味よく聴かせた「三つの幻想的舞曲」。10代半ばにして才気煥発[さいきかんぱつ]、モダンな感覚にあふれたこの小品や、つづいて演奏された20代の曲「24の前奏曲」からは、後の作品に見られるような屈折した韜晦[とうかい]はまだ聴こえてこない。順風満帆とまではいかないが、作曲人生を歩み始めた若いショスタコーヴィチのみずみずしい息吹が、音やリズムの個性的表情から生き生きと聴こえてくる。各曲の性格的な特色をつかんだ演奏がその変幻多彩な面白さをよく引き出して、聴く者を飽きさせない。
一方、作曲家の多事多難な人生が深く刻印されているかのごとき「ヴァイオリン・ソナタ」は、「前奏曲」と同じようには聴けない。レクイエムとも葬送の音楽とも聴こえるこの作品で、作曲者が自分の死について考えていたことは間違いないだろう。ゆるやかなテンポで静謐[せいひつ]な緊張感がつづく両端楽章にはさまれた激烈なスケルツォ楽章は、あたかもディエス・イレ(怒りの日=レクイエムの重要部分)のごとし。うってつけの共演者・荒井英治の渾身[こんしん]の演奏と掛け合わされた迫真のデュオは聴き応え十分。シリーズのとどめにふさわしい快演となった。
(池田逸子・音楽評論家)
5月23日、東京・王子ホール