三宅麻美
芸大卒業後ベルリンとイモラに学んだ三宅麻美は近年進境の著しいピアニスト。06年に開始したショスタコーヴィチ・シリーズも第5回を迎え、ソロとアンサンブルに成長ぶりを示した。前半のソロは「3つの幻想的舞曲」と「24の前奏曲」。前者では間の取り方と、各曲の性格の対比的奏出が秀逸。後者も24曲の多彩な表情をゆとりで弾き分け、全曲飽かさず聴かせ通した。メロディスト、情熱家、皮肉屋、哲学者、さまざまなショスタコーヴィチが鍵盤から踊りだす様は愉快爽快。後半は荒井英治を招いての「ヴァイオリン・ソナタ」。なんと適任のゲストだろう。楽譜の情報を漏らさず読み取り、命を吹き込むという行為の神髄を荒井は目のあたりに見せてくれ、彼の発信を受け止めた三宅も同じ高みに昇った。スケルツオの求心力、フィナーレの両カデンツア、弓の多彩な技巧、白熱のアッチェレランド。ショスタコーヴィチ・ファンを増やしたこと間違いなし。
(5月23日・王子ホール) 〈萩谷由喜子〉