【コンサート覚書き】ロナルド・ブラウティガム フォルテピアノリサイタル

ロナルド・ブラウティガム フォルテピアノリサイタル@トッパンホール
Ronald Brautigam fortepiano recital

昨日出掛けた演奏会は、来日の少ないオランダの名手が弾くとあってチケットは完売。
使用楽器は1800年頃のAnton Walterをモデルに2002年にチェコで製作されたもの。

前半はモーツァルトのソナタ2曲とロンドイ短調。フォルテピアノは音の減衰が早く、減衰時にしなりがあり打鍵も柔らかいので、優美なディミヌエンドを伴って、フレーズの終わりが少しずつ幅広になる。逆にフレーズが向かっているときはひたすらに進んでいくので、そのコントラストが強く出た演奏で、音量が出ない分、打鍵時の音がかなり聴こえ、その残響効果も考慮して音楽運びをしているように聴こえた。
独特な音の伸びはアルペジオに効果を発揮し、連続する和音の伴奏形や同音連打がメロディと同じように大きく聴こえるのは決して邪魔にはならず、むしろ主導権を握っているようだった。

しかし、後半のベートーヴェンではやはり物足りなさを感じてしまう。作品31-3のソナタ冒頭で四六の和音が来る箇所はなんとも言えない柔らかさと温かな波紋が広がるようでピアノを弾くのとは違った表現があり、悲愴ソナタやテンペストの第三楽章など疾走する曲調には合っていると感じたけれど、他はあまり集中して聴くことは出来ず、それよりもベートーヴェンの、未来を見据えた曲作りに驚嘆し、現代のピアノで彼の作品を弾けることに心底喜びを感じるばかりだったが、なかなか聴く機会の少ない音は新鮮で、興味深いものだった。


〔facebookパーソナルページより転載〕