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【コンサート覚書き】グリゴリー・ソコロフ

2014年3月27日 by admin

忘れないうちに、1ヶ月前の感動をレポート。(3回分なので長いです‼)

グリゴリー・ソコロフ
Grigori Sokolov Piano Recital

まさしく現役ピアニストの第一人者であろう。だがその名はあまり知られていない。ロシア出身、弱冠16歳でチャイコフスキー・コンクールを制覇。以来演奏活動をヨーロッパ中心に続けている。若い頃一度来日しているが、本人飛行機嫌いらしく、いまは居住するドイツからあまり遠くは移動しない。ロシアを出た演奏家が良くするように、ドイツの音大などで教鞭をとってもいない、室内楽もやらない。ソロ・リサイタルのみで毎年、サンクトペテルブルクを含むヨーロッパ各地をまわり、大ホールを満員にする。
ロシアものを勉強するうち彼の録音を聴くようになり、留学中のイタリアで演奏会に行って以来、また聴きたい想いが募りにつのり、今回の渡欧で3度の演奏を聴いた。

まずドイツ・フランクフルトのオペラ座での演奏会。プログラムは3回とも同じで、前半はショパンのソナタ第3番に後半はマズルカを10曲。
冒頭のソナタ、第1楽章の提示部を聴いただけで、大げさではなく、それだけで来た甲斐があると思える満足感。息の長いフレーズ、時間の扱い方はまるで大海を自在に泳ぐ魚のようで、感じるのは音楽に対する、あふれ出る情熱と誠実さ、そしてどんな状況でも妥協のない探求心。舞台上でその姿を見せるのは彼にとっては当然のことで「何も特別ではない」のだろう。でもそれが出来る人は限られている…。
第3楽章再現部ではリズムがとても新鮮に感じられ、心が洗われるようだった。ただ、2000人のホールに合わせてか、メロディーをとにかく遠くまで飛ばそうとかなり強い打鍵をするので、微妙な音量や表現の際の雰囲気が本来の彼の演奏のようには聴こえてこない。本番30分前までホールでリハをしていたのも、音響のチェックに労を費やしたのかもしれない。
しかし後半のマズルカでは段々に響きが良くまとまり、さらに自在になって素晴らしさが増した。特に最後の二つのマズルカ(作品50-3,68-4)が絶品。
アンコールでは、シューベルトの即興曲3曲の後に、3つのピアノ曲の第2番を弾き出した時には、今からこの曲を弾くの⁉︎と嬉しい悲鳴だったのだが、最近、彼のアンコールは毎回6曲と決まっているようで、その後にもマズルカ1曲とグリボエードフという知られざる作曲家の短いワルツを弾き、ようやくホール内の明かりが点いた。アンコールだけで1時間弱。
そしてなんと、演奏後に本人に会いに行くことに。このような演奏を聴いたあとでは恐れ多くてとても気が引けたのだが、いつもフレンドリーに受け応えてくれるからとの知人の後押しのお陰で、直接お話し出来た。会ってみると先ほどの舞台上のイメージとは違い、本当に優しく微笑みながら丁寧に受け応えして下さり、有難いことにソナタの版についての違い(1楽章で初めて耳にする旋律を弾いていたため)やアンコールの珍しい作曲家についてなど、若々しい表情と活き活きとした口調で事細かに説明して下さった。

次の演奏会はイタリア・ジェノヴァのカルロ・フェリーチェ劇場。前から二列目という席だったこともあり、当然フランクフルトよりも音が間近で臨場感があってより楽しめた。常にたゆたうように進む音楽運びはもちろんのこと、色が変わる瞬間の意識、ポリフォニックな処理など、近いのでより伝わるものがあった。開始時間の遅いのが常のイタリア、21時開演でアンコールは変わらず6曲、終わったのは殆ど真夜中。
やはり大劇場のせいか ものすごく強い、かなり上からの打鍵(でも決して割れはしないのだが)で、会場に合わせるとは言ってもこのような演奏を続けていては先が心配だし、本人も納得していないのでは?仕方なくこのように弾いているのでは?という疑問が残った。

そしてその疑問をすっかり晴らしてくれたのが、スペイン・バルセロナ、カタルーニャ音楽堂での演奏。
まず、世界遺産でもあるこの会場が圧巻、外観だけでなく天井、壁、舞台上と至るところまでリュイス・ドメネク・イ・モンタネール渾身の装飾が施されており、観るもの誰もが息を飲む。横幅が思ったほど広くないホールで、座った席が2階右側バルコニー最前列と、ピアノの音が1番良く飛んでくる場所だったのが本当に良かった。素晴らしい響き、まさにマイクが拾うような音、ソコロフの奏でる豊潤な音が、冒頭の第1音から身体全身に響いて満たされる。あり得ないがまるで私達のためだけに弾いてくれているかのような、かけがえのない経験をしている感覚。今までのように無理に音を飛ばす必要がないので、自然な打鍵で楽に弾いていて、ソコロフ自身も楽しんでいるし、彼のやりたいことが手に取るように伝わってくる。
事もあろうにソナタ第1楽章のあとで拍手が起きてしまい(ホール見学目当てのツアー客なのか?)第2楽章では少々気が反れてしまったのが勿体なかったが、第3楽章はやはり素晴らしく さらに色彩を増して聴こえ、曲全体を通してとてつもない立体感とダイナミックレンジを感じさせる。
後半、終わりに進むにつれて、アンコールも6曲あるにもかかわらず、終わって欲しくない気持ちと、今ある状況への感謝の気持ちで、涙が溢れてきた。どうかまた聴きに来られる時まで健在でありますように…と祈らずにはいられなかった。
写真は全てカタルーニャ音楽堂(Palau de la musica catalana)。

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〔facebookパーソナルページより転載〕

カテゴリー: 三宅麻美アート覚書き タグ: facebook
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