初夏の陽気の日曜日、ラトヴィア放送合唱団を聴きに出掛けた。
Latvian Radio Choir@Musashino bunka kaikan Ricital Hall
リニューアルされた武蔵野市民文化会館の小ホールで、合唱大国ラトヴィアの精鋭グループを聴く。
前半に現代曲三曲と、後半にラフマニノフの晩祷全曲というヘヴィなプログラム。
指揮はカスパルス・プトニンシュ。
現代曲ではリゲティのルクス・エテルナが作曲家の狙いの鋭さが際立っていた。出だしからオルガンの響きを再現しているかのようだし、ソプラノ・ソロはまるでフルートの高音のように持続される。宇宙空間に放り出されたような、始まりも終わりもない世界。他にトーマス・アデスとジョナサン・ハーヴェイの曲。
ラフマニノフの傑作『晩祷』は全15曲からなり、60分を超すアカペラ合唱曲。
私自身生で聴くのは3回目で、曲の凄さとこのロシア正教のための宗教曲を日本人が歌うことにひたすら驚いた1回目、ロシアの合唱団だったのにラフォルジュルネ特有の環境の悪さが残念だった2回目を経て、今回は天井の高い小ホールという贅沢な空間なのもあって、心から楽しんだ。
この合唱団は良い意味での雑味があり、音楽と言語に共通するリズムに何とも絶妙な響きの膨らみを伴わせるので、ラフマニノフの感動的な和声がより浮き立ってこちらに届く。
そしてやはり、弦楽器を聴いても感じることだけれど、人の声の持つ響きの温かみはピアノでは到底成し得ない、真似のできないもので、その音律に触れると自然に身体が反応する。
古い教会スラヴ語が用いられているこの曲を聴きながら、つい先日観たミュシャのスラヴ叙事詩を思い出し、両芸術家の民族への強い想いを感じると、涙無しには聴けなかった。
アンコールのラトヴィア民謡がまた素晴らしく、楽譜から解放された団員の皆さんの晴れやかな笑顔とともに、心に迫る合唱だった。
帰りに深大寺に立ち寄り、名物の九割そばをいただきました。
〔facebookパーソナルページより転載〕