先週、用事の合間にようやく、20世紀最大の彫刻家 アルベルト・ジャコメッティ展へ出掛けた。
Exhibition of Alberto Giacometti @The National Art Center Tokyo
普通、美術館にあるジャコメッティはせいぜい一体、多くて二体だと思うけれど、大小さまざま、これだけ多くの作品が時代を追って展示されているのに驚く。順に観ていくと、なぜこのような表現に行き着くのかが非常に良くわかるようになっている。
ミュシャの時と同じように、ひと部屋だけ写真撮影可能になっているのを知り、慌ててロッカーに携帯電話を取りに行く。
スタンパ というイタリア国境にあるスイスの小さな村で生まれ、父親が画家で、幼少期からアトリエにいるのが当たり前の生活をし、父の影響で「見たままを捉える」セザンヌに憧れ、イタリア絵画、古代エジプト・中世の美術にのめり込む。
アフリカ、オセアニア、キクラデスの彫刻に興味を持ち、頭蓋骨のデッサンに励んだりもする。キュビズムやシュルレアリスムを体現したあとに放棄して、モデルを前にした制作へ行き着くが、その独特な距離感から等身大では制作できず、マッチ箱に入るほどまで小さな作品になる。
哲学者サルトルや日本人哲学者の矢内原伊作との交流など、その足跡を知ってから作品を観ると、なるほどと頷ける。
印象的な本人の言葉を以下備忘録として。
“見えるものを見える通りに捉える 到底不可能なのを知っているが自分にできる唯一のこと”
“私とモデルの間にある距離はたえず増大する傾向を持っている”
“もの に近づけば近づくほど、もの が遠ざかる”
“モデルを前に、生者を死者から隔てるまなざしをとらえることに執着した”
“ひとつの彫刻はひとつのオブジェではない
それはひとつの問いかけであり、質問であり、答えである
それは完成されることもあり得ず、完全でもあり得ない”
“絵も彫刻も詩も文学もたいしたものではない
試みること、それがすべてだ”
〔facebookパーソナルページより転載〕