昨日、梅雨の晴れ間に、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館の「ターナー 風景の詩」展へ。
Turner and the Poetics of Landscape @Seiji Togo Memorial Sompo Japan Nipponkoa Museum of Art
ベートーヴェンと同じ時代に生き、ロマン主義、印象主義を先取りした画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー。
数年前の都美館での展示に行けなかったのがずっと心残りだったので、楽しみに出掛けた。
どの絵もまず、風通しのよい、心地良い空間が広がる。そして誰よりも光を求めているのがわかる。
空も、青よりも白を多く用い、 夕景の薄い紅色と、大地や木々の土色がグラデーションを成す。
太陽、空、海、川、山、岩、波、風 など自然に対する畏敬の念と、城や遺跡などの建築物への愛着と。
ダイナミックな風景の中に、人々の暮らしを非常に控えめに、かつ愛情を持って描き込んでいる。そのスタイルにふと、明治の日本画家、川合玉堂を思い出した。
多くの作品が、フランス、スイス、イタリア等に旅行に出かけてスケッチをし、恐るべき記憶力をもとに、アトリエに戻ってから制作されたそうだが、イングランド人だからこその南国の光への憧れと、緻密な筆使いが、ロマン的な色合いや空間を作り出しているように感じられた。
10代のころから才覚を表し、母親が精神病を患っていて、自身も情緒不安定だったそうだが、数多く展示されていた白黒のエッチング作品は、その性格からかどれも当時にしては異常なほど細かく描かれており、色彩があるものに比べて、より光が鮮烈に伝わってきた。
今回の展示は長編詩の挿絵など、比較的コンパクトなサイズの作品が多かったので、イギリスに行って、もっと大きな作品を存分に観てみたいと思った。
〔facebookパーソナルページより転載〕