『音楽現代』2006年6月号

『音楽現代』2006年6月号

◆三宅麻美ショスタコーヴィチ・シリーズ Vol 1
三宅は芸大やべルリン芸術に学び、ドイツやイタリアで活躍している。ショスタコーヴィチ生誕100年の今年、ナマで聴ける機会の少ない「24の前奏曲とフーガ」全曲演奏に挑む。これに室内楽や声楽を組み合わせた、全3回の意欲的な演奏会の第1夜。「前奏曲とフーガ」は第1番から5番、第16、17、13、12番の9曲を演奏した。三宅は明快でバランスの良い表現を聴かせる。堂々たる押し出しも雄弁。第2番フーガのキレの良さ、第3番フーガはリズミックな華やかさで確実なタッチから運動性溢れる。第17番は積極的な表現と濃厚な色彩感。第13番の前奏曲は多彩な響きをシンフォニックにとらえ、フーガは意志的な粘りを聴かせる。第12番は強固な意志力を感じさせる前奏曲。フーガは攻撃的にとらえ、リズムがはじけ色彩が放射される。後半はピアノ三重奏曲第2番だが、ヴァイオリンの清水醍輝とチェロの長南牧人があまりにも冴えない。渾身のピアノの足を引っ張って最低。(3月26日、東京オペラシティ・リサイタルホール)
(諏訪節生)