『音楽現代』2014年7月号

 

──今までのシリーズを振り返っての感想をお聞かせください。
三宅 これまで、ピアノ曲と室内楽を組み合わせたプログラムを5回組みましたが、ショスタコーヴィチ没後50年の2025年までは続けたいと思っており、大体のプランは頭の中に出来ています。前回のシリーズ第5回では荒井英治さんをお迎えし、これまでにない境地に連れて行っていただけた気がしました。5回を終えたことで、また2年前にはロシアのオーケストラとコンチェルト第1番を協演したことも大きいですが、ショスタコーヴィチの音が血となり肉となるといいますか、身体の一部になったような、そんな感覚があります。
──今回のピアノ・デュオについての経緯や期待などはいかがでしょう?
三宅 シリーズ第6回では、ずば抜けた能力を持った、素晴らしいロシアのピアニスト アンドレイ・コロベイニコフさんと共演できることになり、非常に嬉しく、興奮しています。彼は世界中での音楽活動の他にも法科大学で法律を学び、司法試験にまで合格していたり、詩も書く、エスペラント語も話すなど多才な方です。彼もショスタコーヴィチ好きでCDも出しており、2年前に交渉した際もすぐにやりたいと言ってくれていたのですが、なかなかタイミングが合わず、今回彼の来日中に急遽実現することになりました。
──プログラムの聴きどころとそれに対する想いを教えてください。
三宅 まず交響曲第9番の4手連弾版は、滅多に演奏されることのないものだと思いますので、貴重な機会です。発表された当時、周囲の期待をわざと裏切ったと問題になったこの交響曲は、軽快でシニカル、機知に富んだ作品で、当時公開の場でショスタコーヴィチとリヒテルのピアノでも演奏されたそうです。ピアニストにとって、加わりたくても不可能なオーケストラ作品を演奏できることは、大きな喜びです。そして2台ピアノのための組曲は、ショスタコーヴィチがまだ16歳の学生だった頃、急逝した父親への追悼の意を込めて作曲されました。比較的親しみやすい初期の作品なので、初めてショスタコーヴィチを聴く方にも楽しんでいただけることと思います。コンチェルティーノは中では
知られた曲ですが、交響曲第10番と同じ年に書かれた、インパクトと求心力のある名作です。素晴らしいピアニストをお迎えしてのデュオとなりますので、ぜひ多くの方にお聴きいただき、ショスタコーヴィチの世界を体感していただけたら嬉しいです。
曲目=ショスタコーヴィチ/交響曲第9番作品70(作曲者自身の編曲による4手連弾版)、2台のピアノのためのコンチェルティーノ作品94、2台のピアノのための組曲嬰へ短調作品6
7/10・19時、トッパンホール デュオジャパン